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ミドルネームの意味

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海外の人にはミドルネームが存在する。ミドルネームってなんかかっこいい。隠された名前、もうひとつの名前、みたいで。

アメリカ出身の夫にも、ミドルネームがある。父方のおじいさんから取った名前だ。実は、うちの子どもたちにもある。長女は、桜の満開の時期に生まれたので「サクラ」。次女は、愛あふれる子になるように「アイ」だ。

ただ、ここ日本では、文字通り彼らのミドルネームは隠されたものになっている。というのも日本の戸籍制度では、ミドルネームは登録できないからだ。氏(みょうじ)+名(なまえ)の形がテンプレなのだ。山田川子、みたいな。

<日本で登録できる名前の形>
(名字)山田 (名前)川子

だから「どうしても名前にいれたい」、という場合は、できるっちゃできるが、名前か名字の一部になってしまう。例えば、ミシェル山田 川子、みたいな。または、山田 ミシェル川子、のような。

<日本でミドルネーム登録する場合(できるっちゃできる)>
パターン1 (名字)ミシェル山田 (名前)川子
パターン2 (名字)山田 (名前)ミシェル川子

ここで、じゃあ、あの人は? と、女子プロテニス選手のクルム伊達公子さんを思い出す人もいるだろう。だが彼女の場合は別パターンになる。「クルム」はミドルネームではなくて、夫の名字。そこに自分の旧姓を追加した感じなのだ。ええ、国際結婚するとこんなことができるんです。

<結婚して夫の名字に変更する際に自分の旧姓を追加したパターン>
クルム(夫の氏名)伊達(彼女の旧姓) 公子(名前)

かくいう私も、夫と入籍するときに、氏名の変更のチャンスが与えられた。一生に一度の改名チャンス……。伊達さんのように旧姓を残したければ夫の名字に追加することもできた。だが、私は旧姓にそこまで愛着はなかったし、なにかと氏名を書く機会の多いJAPANだ。ここに住み続けるなら、画数は短いほうがラクだと思い、日本人同士の結婚と変わらず、夫の名字に変わるだけにした。

そういえば、日本では夫婦別姓は認められていないのだっけ。考えたこともなかったが、私にはそのチャンスがあったのだ。「戸籍の作れない外国人」との結婚は基本的に「夫婦別姓」なのである。日本人同士のように、一つの姓を名乗る必要も、法律もないからだ。しかも選択肢は豊富で、夫の姓にしたければ変更できるし、伊達さんのように両氏を取り入れた「欲張りパターン」も可能ときた。夫婦別姓派の人は、国際結婚の検討余地あり? なんてね。

名字の選択は自由だが、子どもを持つ予定の人は慎重にいきたいところ。同一戸籍の子どもにも同じ名字が適用されるためだ。たとえば、おなじみのクルム伊達さんで言うと、子どもの名前は「クルム伊達〇〇」になるのだ。

さて、お気づきの方もいるかもしれないが、「外国人は戸籍を作れない」ということは……そう。我が家の戸籍は、私が筆頭主になる。夫の情報は、身分事項の項目の、「婚姻」に詳しく記載される。

我が家の戸籍謄本

我が家の戸籍謄本

話を「ミドルネーム」に戻そう。

日本人にはなじみのないミドルネーム。一体なんのためにあるのか、調べてみた。すると、詳しく解説している記事「ミドルネームの意味、知ってる?よくある例と日本人へのオススメ30選」を発見した。それによるとズバリ、「氏名が同じ人を区別するため」だそう。

言われてみれば、である。外国(英語圏)の名前はバリエーションが少ないというか、似たような名前がすごく多い。「ニック(ニコラスの愛称)」という名前の人には3回も会った。あまりにもニックと会うので、「またニック⁉」 "He is Nick No.2"(彼はニック2号)などと夫と笑ったくらいだ。

彼らはどうして同じ名前をつけるのか。

一つは、親族と同じ名前をつける習わしがあるからだ。うちの夫の名前も、お父さんから取られている。つまり2人は親子にして同姓同名。ジョージ・ブッシュ親子もこのパターンだ。日本でも、親族の名から拝借することはある。ただ、その場合でも一字だけとかで、丸々名前をとることはまれではないだろうか。

クリスチャンが多い国ならではの理由もある。聖書に出てくる人物からとる、というものだ。外国人でよくある名前の、Joshua(ジョシュア)、Noah(ノア)、John(ジョン)、Michael(マイケル)などは、すべて聖書に由来している。

こうした理由から、同姓同名が量産されるので、区別するためのミドルネームらしい。何事もちゃんとした存在理由があるのだ。同じ人を区別する、という使命をもったミドルネーム。さぞ活躍してるだろうと思い、夫にこんなことを聞いてみた。

じゃあ、学校や会社で自己紹介するときは、ジョージ・w・ブッシュです、みたいに言うの?

いや、ミドルネームは言わないよ。

じゃあ、いつミドルネームを披露するの?

聞かれたら教える程度で、わざわざ自分からミドルネームを言うことはほとんどないよ。

え? じゃあミドルネームっていつ使うの?

政府に提出する書類とか、会社や学校に提出する書類に記入するね。

……。

どうやら、ミドルネームは「書類上」で活躍していることが分かった。たしかに、情報を管理する際、同姓同名の区別は必須だろう。

でも。でもさ。あきらめきれない私は食い下がった。

クラスに同姓同名の子がいる場合とか、そのうち一人を呼びたいときにミドルネームで呼ばないの?

……そういう経験ないから分からないけど、ミドルネームでは呼ばないね。相手の目をみて、名前を呼ぶと思うよ。

ふーん。そういうものなのか。日本人の私にはなかなか理解できないけど。だって名前って呼びかけるとき使うものじゃん? おい、山田。あの資料まだか? とか、山田さんの今日の洋服素敵ね、ふふふ、とかさ。呼び名として使われることのない名前があるなんて変なの。

だが、調べてみたらなんと昔の日本にもあったのだ。「ミドルネーム」みたいなものが。

例えば、豊臣秀吉。実は秀吉の本名は、豊臣朝臣羽柴(藤吉郎)秀吉なんだとか。

(氏)豊臣 (姓)朝臣 (名字)羽柴 (通称)藤吉郎 (諱)秀吉 

な、名前が5つある……‼

この場合、血族を表す「豊臣」がミドルネームみたいなポジションだろうか。それとも身分秩序を表す姓、朝臣だろうか。はたまた通称の藤吉郎だろうか。

驚くのはこれだけではない。平安から江戸時代に生まれた武士や貴族の子どもは、出世魚のように名前が変わったというではないか。子どものときは「幼名(ようめい)」を与えられ、成人してからは「諱(いみな)」を。しかし本名にあたるこの諱(いみな)は、「忌み名」という意味合いをもち、生前に実名を口に出すことや人前で明かすことは禁忌とされていたらしい。え、ってことは……

呼び名として使われることのない名前 ~JAPANEASE version~ ではないか。

古今東西老若男女、なぜ呼び名として使わない名前を人はつけるのだ……。

だが疑問が残る。「秀吉様」と実名で呼べないならば、家臣たちは秀吉をなんと呼んでいたのだろうか。殿様とか殿下だろうか。

本名の代わりに使える「通称」は、秀吉より目下の人は使えなかったらしいし。まぁ、詳しいことは歴史研究家に話を譲ろう。

ごちゃごちゃ言ったが、アメリカ人の夫にとってお祖父さんの名からとったミドルネームは特別らしい。名前の一部に「自分のルーツ」があることは、たしかに特別な勇気をくれる。

私にはミドルネームはないけれど、私の名前は母の名前から一字、そして母の尊敬する詩人の名前から一字づつとって組み合わせたものだ。

私にとって私の名前は特別で、私が私である勇気をくれる。

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