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夫と出会ってから、「おもってたんとちがう!」とおもうことだらけであるが、一番ギャップを感じたできごとは? と聞かれたら、それは「意外とケンカしない」ということである。
結婚前、さんざん「国際結婚にはいろんな壁があるから苦労するよ」といわれてきたので、どうなることかとおもっていたが、
国籍も人種もちがうからこそ、「なんだこいつ?」とおもうことがあっても「まぁこいつアメリカ人(日本人)だしな~」とスルーできてしまい、おもったほどケンカにならないのである。
たとえば最近、近所のジジイが娘の幼稚園に
「俺の田んぼに子どもを入れて遊ばせるな! 今度見かけたらこどもを田んぼに放り投げる!」
とクレームを入れるできごとがあったのだが、それを知った夫が「これは脅迫だ! 犯行に及ぶ前に警察に捕まえてもらわないと!」と警察に駆け込むのをわたしは止めなかった。
※アメリカではどんな理由があれ相手に「〇〇するぞ!」と危害をくわえるような発言をすると立派な脅迫罪になるので、口の悪い子はアメリカでは気をつけてね!
わたしが日本人と結婚していたら(そもそも上記の行動をとらないだろうけど)、「脅迫なんておおげさな。ただのジジイの暴言だよ」と夫を止めただろう。
だが、「一家に一銃」があたりまえの国で育った夫にとって、ご近所トラブルは命がけなのだ。
ほかにも、遅刻するというのにソファーにすわってコーヒーを飲む夫を「さすがルールを守るよりも仕事のパフォーマンスで勝負の人種だわ」、と感心したり、
料理中にキスしようとしてきた夫を「いまそんな時間ない!」とかわしたところ、「There is always time for love(愛し合う時間はいつでもある)」とロマンティックな言葉を返されて「そうだこいつらにラブのTPOはなかった」としみじみしたり。
どれもこれも、アメリカ人だからしょうがないか……とスルーし、揉めることはなかった。
逆もしかり。
横断歩道を渡るとき、止まってくれた車に気を使ってつい小走りをしてしまったり、出先ですぐに「場所取り」をしてしまうわたしのジャパニーズっぷりを「さすが日本人」と夫はスルーしている。
1週間のうち6回セックスを断っても、「まぁ日本人だからね……」と納得してくれるのもありがたい(国際結婚界隈で、日本人嫁の性欲が低いことは有名らしい)。
そんな私たちであるが、つい先日、夫がわたしのまちがったRの発音をスルーできずケンカになってしまった。
わたしは子どもたちに英語の絵本を読みきかせていたのだが、「scraggly」という単語が読めず、夫に聞いたのがはじまりだった。
わたし「これなんて発音するの?」
夫「scraggly」
わたし「スクラグリー?」
夫「No.Scraggly」
わたし「スクワグリー?」
※わたしはRの発音がいまだにうまくできない
夫「NO! ちゃんと読めないんだったら読まないで!」
夫は発音に厳しい。小さいころから正しい英語に触れ、正しく発音するのが英語教育にはインポータント(重要)だと考えているからだ。
いっぽうわたしは、まず「正しさ」よりも、英語をつかって他国の人や文化にふれる「楽しさ」を知る方がインポータントでは? 発音矯正はおいおいすればいいと考えている派である。
おたがいに考えをゆずらないし、いつまでたってもわたしがRをLで発音してしまうため、わたしたちは定期的に「Rの発音」をめぐってケンカをしているのである。
あれ、まてよ……。もしやこれが壁というやつではないのか?
Rをただしく発音できないために相手が「何言ってんだおまえ?」となる「Rの壁」。
たとえば「right(そうだね)」とあいづちをするとき、わたしが言うと「「light(光)」と夫に伝わる。
「allright(了解)」は「all light(ぜんぶ光)」に、
「Do you want more rice?(ごはんお代わりいる?」は「Do you want more lice(シラミもっといる?)」に。
※liceは英語でシラミという意味
こうしてあらためて見ると、発音できないとはいえ「シラミもっと食べる?」はさすがにひどいな、と反省。
そこでやっと、本腰をいれてRの発音を開始したのだが、舌を口の奥に引っこめて、舌先を上あごに近づけて音を出す……がなかなかできない。
どんなに舌をRの位置に持っていこうと、Rと発音する直前に舌が勝手に「ラ」の動きをしてしまうのである。
おそるべし34年にわたって体に染みついた日本語の音……!
というわけで、あいかわらずRの言えないわたしであるが、Rのつかない単語を代用したり、もはや日本語で話したり、英語の絵本は夫の担当にしたりして、Rの壁の回避に成功。夫と仲良くすごしている。
夫婦に立ちはだかる壁には、「まぁこいつ〇〇だしな~」とスルーして、壁を壁だと認識しないのが一番なのかもしれない。
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次回もぜひお楽しみに。
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