ぱんじーすみれのおもってたんとちがう!

国際ファミリーがくりひろげる、「おもってたんとちがう!」日常エンターテイメント。

パーティーで急接近

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前回のお話はこちら。

恋愛って不思議だ。

うまくいくときは嘘みたいにぽんぽん進むが、うまくいかないときはなにをしてもほんとにうまくいかない。それが世間で言われる「相性」とか「縁」なんだと気付いたのは、25歳のときに初めて参加した国際交流パーティーでだった。

それまでは顔がタイプなのに、いい人なのに、両想いなのに、噛み合わない、タイミングが合わない、リズムが合わない、という男性たちばかりだった。LINEの返信タイミングがずっと「これじゃない」と感じてた彼とは半年で破局したし、隣で並んで歩くのが何故かしっくりこなかった彼とも短期間で終わった。たかがそんなこと、されどそんなことでだ。

長年、見えない相性に振り回されてきたので、夫に出会い、初めて「あ、なんか合う」と感じたときは、衝撃よりも、やっと自分が自分らしくいれる居場所が見つかり、ほっとしたような感覚だったのを覚えている。

川端康成風に言うと、「トンネルを抜けるとそこはニルヴァーナだった」みたいな。あぁもうこれで、かけひきとか、ルールとか、テクニックとか、見栄とかそういった恋愛のあれこれから解放されたんだっていう感覚だ。

今まで重要に思ってた「恋愛のあれこれ」が、夫に出会ってどうでもよくなってしまったのだ。実は夫が仏教徒の偉い人で、煩悩の消し方を説いてもらったから……ということではない。ドキドキはするけれど、繕う必要をまったく感じない不思議なオーラが夫から出ていたからだ。恋のかけひきとか、ルールとか、テクニックとか、この人には使いたくない、する必要がないと思ったのだ。いつもなら被るはずの猫は、パーティーフロアに放り投げた。猫は被るものじゃなくて、愛でるものだ。

夫とは、日本語学校のことや、アメリカでの暮らし、それからお互いにバイクに乗ること、なんてことのない会話ですごく盛り上がった。よく、映画なんかで恋に落ちたり、印象的なシーンは時が止まる演出をされがちだけど、あの夜の私たちを思い出そうとすると同じことが起きる。記憶の中の私たちはいまも笑ったままなのだ。恋する脳も、演出しがちのようだ。

そうそう、今思い返してもすごいと思うのは、へたくそな英語とへたくそな日本語の混じる会話だったのに、会話のテンポが乱れたり、流れが止まるようなことがなかったことだ。夫の前に、日本人、フィリピン人、フランス人、韓国人とデートしたことがあるのだけれど、そんなことは夫だけだったのだ。

今も忘れられない強烈なサプライズもあった。パーティー中に、しかもあったばかりの夫からキスをされたことだ。いくら外国人はサプライズ好きだといっても突然のキスはサプライズが過ぎる。ちなみにキスされたときの心境だが、「うれしい~(キラキラ)」となるよりも、度肝を抜かれたの一言に尽きる。

実は、夫が「Do you like KISS ?」と聞いてきた時点でそんな予感はしていた。していたが、まさか公衆の面前でほんとうにキスをしてくるなんて、うら若きジャパニーズウーマンは思わなんだ(私もYESとは言ったけどさ)! しかもキスするところを、二階フロアの手すりごしから、ガッツリまりな(一緒に参加した親友)に見られていたというオチつきだ。ガーン!

***

トンネルを出るとそこはニルヴァーナだった。グラスの底は空だった。バーカウンターに私は行った。

彼は私の横に立ち、バーテンからビールを受け取ると自分の分だけお金を払った。私の心に冷気が流れ込んだ(おごってくれないんだ……)。

彼はスツール席に向かい、私を呼んだ、

「This way,This way!(こっちこっち)」

グラスに入ったビールがこぼれないようにゆっくり腰掛けた男は、薄茶色の髪色に、泣いているようなたれ目をしていた。

こんな近い距離に座るのかと彼を眺めると、外国人らしいロマンティックなトークを繰り広げ、2人の周囲はラブラブモードに包まれていた。

「Do you like KISS?」

「えっ……い、yes」

「ちゅ。」

度肝を抜かれた。

ふと見上げると、二階のフロアからびっくりした顔で私たちを見下ろす友と目があった。

***

パーティー後、私たちは近くの居酒屋に流れることになった。そこで夫は、まりなからの厳しい入国審査を受けることになった。仕事は何をしているのか、本国に彼女がいるんじゃないか、実は結婚しているんじゃないか、ロマンス詐欺師じゃないのか、帰国までの遊び相手をさがしているんじゃないか、などなど。すべては友だちである私のために。うぅ……ありがとうまりな。持つべきものは、恋愛入国審査官の友だちだ。

帰宅後、ふわふわした気持ちのままお風呂をすませ、そろそろ寝ようとしていたときだった。アイフォンからメール受信の着信音がなった。まさか……期待しながらメールを開くと差出人は、無事に入国審査をクリアした夫からだった。胸が高鳴る。トクン、トクン……。本文を読むと「nighty」の文字が。

 

……

 

……

 

……nightyってなんだ? 英検3級の問題にも出てこなかったぞ。

 

普通なら心躍るはずの気になる殿方からのメッセージ。だが、知らない英文に困惑する私。あぁ、そうか、「国際恋愛」をするということは、こうゆうことなのだ。きっとこれはほんの序の口で、この人との恋愛は壁だらけかもしれない。

Am I ready to 国際恋愛

私の中に眠る煉獄さん、いやハートに火が付く。心を燃やせ、パンジー薫!

壁だらけ上等。全集中! 恋の呼吸、漆ノ型「電子辞書使って知らない英単語検索」でぼっこぼっこにしてやんよ!

国際パーティーに初参加した日の夜、「恋の戦士」に覚醒した私。さて、2人の初デートはいかに?


次回もぜひお楽しみに。

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