「ギャップ」を埋めずに食べてみた。

~ アメリカ人と結婚した筆者が綴る、「ギャップを楽しむ2人」のスパイシーライフ~

あなたが年始にくれたもの。シャガールみたいな青い夜。

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photo by Vecteezy

25歳の夏。

生まれて初めて、同棲をすることになった。しかも結婚前提で。

その事実に、当時25歳の私はとても浮かれていた。どれだけ浮かれていたかと言うと、フェイスブックに二人のラブラブ同棲写真を載せて全世界にアピールしていたくらい。

アイタタタ……。痛い。痛すぎる。

痛すぎてケンシロウも思わず「アタタタタタタッー!」ではなく「アイタタタター!」と叫ぶレベル。

だが、本当の「アイタタタター!」な出来事は、このあと訪れるである……。

不吉な書き方をしたが、その通りなので安心してほしい。

結末から言うと、突然夫が「入籍したくない」と言い出したため婚約&同居を解消。結婚までの道のりは延長戦へ突入する。からの「浮気した」と自白され、「破局」というゲーム中止を迎えるのである。

人の不幸は蜜の味というけれど。己の不幸は鉄の味だった。泣き叫びすぎて。

読者のみんなへ。今日は、私たちの「蜜の味」を遠慮なく味わっていってほしい。だってこれが、国際結婚までに私たちが歩んできたリアルな軌跡だから。

そしてこの先、みんなが「恋愛つら……」となったとき、プーさんが「はちみつたべたいなぁ」とハチミツの壺を漁るように、記憶の壺から私たちの蜜を取り出して舐め、次の恋愛へ進むチカラにしてほしいと思う。

て、なんやねんソレ。

さて、物事が順調に進むさまを「とんとん拍子に進む」という。こと結婚においてはそういう相手は望ましいとされる。結婚はタイミングと言うが、ほんとうにそのとおりな側面があるからだ。

では私たちはどうだったか。

「とんとん」なんてかわいいものではなかった。例えるなら「ド・ドドンパ!」だった。そう、あの発射1.56秒で時速180kmに到達し、天井知らずのスピードキングとホームページで紹介される、富士急ハイランドの人気ライド「ド・ドドンパ」だ。

夫と出会ってから、とにかく猛スピードでライフイベントが過ぎ去っていった。

妊娠、親への挨拶、同棲、流産、浮気発覚、婚約破棄、同棲解消、転職……。この間なんと1年。普通の人が数年かけて体験するイベントを、いっきに1年以内に経験したのだ。

にんにく、背油ましましの次郎ラーメンはうまいが、現実ライフでイベントましましなんて食らうものじゃない。胃もたれどころですまないからだ。

そもそも、どうやって浮気がわかったか。そこから話していこう。

始まりは、共通の知人であるあさこ(仮名)がうちに遊びにきた帰りに起きた。駅まで送って「またね」となるところ、「あのね」とあさこが切り出したのだ。

あのね、フレイザー(夫のこと)は浮気してたらしいよ。結婚して本当に大丈夫?

不意打ちすぎる告発に、私の耳は一瞬聴力を失った。

え? なんて? うわ、上履き?

信じられなかった。夫が浮気なんて。そもそも週6日、同棲してからは毎日のように一緒にいるのに、一体いつ浮気なんてしたのだろうか。

あさこによると、あさこは彼氏のライアン(※なれそめ1話参照)から聞いたらしい。日本語学校で同級生だったライアンと夫。2人はたまに飲みに出かけていたのは知っているが、いつかの酒の席で酔っぱらった夫が「武勇伝」を話してしまったらしい。

バーで会い、そういう流れになったと。相手の女はまったく知らない女だという。

完全なワンナイトカーニバルだ。

それを聞いて、私の気分は胸の奥Zuki-Zukiと音を立てるAnjelだった。とくかくもう、夫のいる家には帰りたくない! と心の底から思った。

浮気されたのは、夫が初めてではない。前にも一度、元カレにされたことがある。厳密にいうと、私が浮気相手だったのだが。

その時は、自分のプライドを守るために相手を切り捨てて終わったが、夫は違う。

自分のプライドよりも、夫を失いたくない気持ちのほうが大きい。夫を愛している。

タイミング的にも早まるべきでなかった。私たちは同棲を開始したばかりだったし、私の妊娠が1か月前にわかったばかりだったから。林先生でも「今じゃないでしょ」と言ったと思う。

切り捨てられないなら、許して受け入れるしかなかった。

だから。

「教えてくれてありがとう」

私はあさこに言った。浮気が事実だとしても、夫が(浮気したと)言ってくるまでは夫を信じる、と。

簡単に「信じる」と言ったものの、これほど難しいことはない。ユダだってキリストを信じ切れなかったではないか。

だから、「飲んで帰る」と言う夫をまたワンナイトするつもりか、と疑ってしまうのはしょうがないのだ。エッチの最中、急にあさこの言葉を思い出し、夫をイかせるのではなく逝かせたくなるのもしょうがないのだ。

しょうがないのだが、私がそんな状態では2人の仲がうまくいくはずもなく。楽しいはずの同棲生活はギクシャクしたものになっていった。

ドラマや映画も悪い。「浮気だの」「不倫だの」こちらが忘れようとしているのに、物語に盛り込まないでほしい。せっかく夫とまったり過ごしていたのに、首を絞めてぽっくりさせたくなるではないか。

そしてある日。夫と映画をみていたらまた浮気だのなんだのと始まったので、つい夫に聞いてしまった。

「……浮気したことある?」

だが敵もさる者、ひっかくもの。ポーカー大会inラスベガスで優勝するくらいのポーカーフェイスの実力者だ。そのため「ないよ」と答える表情からは、浮気したかどうかは読み取れないのであった。

***

妊娠が進むにつれ、つわりがピークへ向かっていた私は、気持ち悪すぎて夫を疑っているどころではなくなった。とにかく水さえ飲めなかったのである。コーラだけは飲めたので、虫歯を心配しながらも背に腹は代えられない毎日を過ごしていた。

そんなある日。

朝起きたら、つわりがぱったりなくなっていたのだ。水が飲める。……つわりが終わった? でも、こんなに早く?

「赤ちゃんに何かあったのかもしれない」

不安になった私は急いで病院へ行った。

「心臓が動いてないですね」

エコー画面をみながら、先生が言った。

え。心臓が動いてない? それって……

「残念ですが、稽留(けいりゅう)流産ですね」

何度も角度を変えてエコーを確認した先生がハッキリと言った。

私は目の前が真っ暗になった。赤ちゃんはまだお腹の中にいるのに。

「夫とこのまま結婚していいのか」という、私のゆらぐ気持ちを見透かしたのだろうか。だから赤ちゃんは、産まれてきてくれなかったのだろうか。

もともと、切迫流産気味ではあった。先生には、できれば休職を、と勧められていた。なのに通勤電車の中で倒れたりしながらも仕事をつづけたのは私だ。

あのとき、仕事をしばらく休むと決断していれば違ったのだろうか。赤ちゃんをかえりみず仕事をあきらめきれなかった私を、夫は怒るだろうか。

「妊娠12週までにおこる流産のほとんどは、赤ちゃんに原因があるものだから」。先生はそう慰めてくれたけれど。

後日、お腹の赤ちゃんを取り出すために掻爬(そうは)手術を受けた。子宮口を広げるため、手術に入る前に膣に何かをいれたような気がするがあまり覚えていない。


覚えているのは、婚約者であるのに医師や看護師が十分な説明をしてくれなかった、と夫が憤慨していたことだ。「外国人だから日本語は分からないだろう」と、夫に説明する気ゼロの日本人医師たちに、夫はひどく絶望していた。思えば夫の日本の医者不信はこの頃始まったのかもしれない。

麻酔が切れ、目が覚めると病室のベッドだった。日帰りの手術であったが、夫がピンク色の花を買ってきて渡してくれたときは、ほっとして涙がこぼれた。終わったのか……。

***

12月28日。

夫と結婚するために好きだった職場を辞めた。「家庭に専念してほしい」という夫の要望にこたえるために。

12月31日。

2人で迎える初めての年末。来年はいよいよ結婚して家族になるのだ。私はとてもわくわくしていた。

1月2日。

入籍のための書類について調べていた夫が突然、「入籍はしたくない」と言い出した。どこかでこうなるんではないか、と不安に思っていたことが現実になり、私はパニックになる。そしてドラマの女優さながら、雪がちらつくお正月の街にバーンッと飛び出し、新年早々営業中であるTSUTAYAをバックに親友のまりなに泣きながら電話をしたのである。

しばらくすると夫から電話がきた。

"I am sorry. come back home please" 

寒いし、疲れたし、お正月そうそうだし、帰ろう。空を仰ぐとシャガールみたいな青い夜だった。

家に帰るとすぐに夫は私をぎゅっとハグして言った。「帰ってきてくれてありがとう」「突然ショックなことを言ってごめんね」。

「やっぱり入籍したい」、という言葉が続くのを期待したが、夫はこう続けた。

私とは一緒にいたい気持ちは変わらないが、日本の法律をよく知らないから‟入籍”はしたくない。離婚となったときリスキーだからと。入籍せずに一緒にいれる方法を探したいと。

国際結婚の離婚率は高い。私たちがそうならないという自信、いや、「私」が夫を捨てないという確信のなかった夫は、慎重になったようだ。

ド・ドドンパの速さで関係を進めてきたのだ。急に不安になって、スローダウンしたいと夫が思うのも当然かもしれない。私だって、夫ととの結婚に迷いがないとは言えなかったのでお互い様である。

しかし、当時の私の周りには「幸せな事実婚カップル」がいなかったし、 ニュースで内縁の妻、内縁の夫……と始まるとだいたい「知情のもつれから事件になり」と続くので、事実婚のイメージもよくなかった。

そんなわけで、事実婚を望む夫の私への気持ちを信じられなくなってしまったのである。


夫を疑う気持ちは、「結婚の責任を取りたくないだけでしょ」という母や友人からの言葉でより強まることになる。

そうかもしれない。だけど、夫を愛していたし、夫が愛しているというならその言葉を信じたい。でももし決断をできないだけの男だったら? そんな相反する気持ちをいったりきたりしながらしばらく決断できないでいた。

そんな中、前から予定していたアメリカ旅行の日がやってきて、交際ステータスがあやふやなまま旅立つことに。(※旅行のくわしい話は、「初めてのアメリカ旅行with恋人以上婚約者未満」で書いていくのでお楽しみに。)

旅の目的は、ズバリ夫の家族へ結婚の挨拶……だったのだが、入籍をしたくないとなった今、夫は私をなんと紹介するつもりだろうか。

恋人以上婚約者未満? 英語で言うと、‟More than lover and less than fiancé”? そんなことを考えていたが、結局私をマイフィアンセ(俺の婚約者)と家族に紹介したのである。

ズコーッ。思わず心の中でズッコケる私。

そうなんだ、私婚約者なんだ……。家族にそう紹介したってことは、将来結婚する脈あり? 交際ステータスがあやふやだった2人の関係は、2週間のアメリカ旅行を経て「婚約者」にフィックスして無事帰国したのである。

そして私の気持ちは。

入籍するかしないかは置いといて、2人で過ごす時間をもっと大切に、純粋に楽しんでいこう、と思ったのである。次の試練が待ち受けてるとも知らず……。

国際カップル、家を失う」へ続く

***

次回もぜひお楽しみに。

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